知らないと損する!?CVA(Coffee Value Assessment)とスペシャルティーコーヒーの新定義とは?
関西・大阪梅田から1駅の場所で、コーヒー器具専門店・検査機関を運営しているCOFFEE LAB KOMAMEYA の小西です。

突然ですが、皆さんは「CVA(Coffee Value Assessment)」という評価システムをご存じでしょうか?
CVAは世界最大のコーヒー教育機関SCA(Specialty Coffee Association)が2023年に発表した、新しいコーヒーの価値評価システムです。

コーヒー業界ではこれまで約20年間、SCAA時代に作られたSCAカッピングフォームという評価基準が世界的に使われてきましたが、CVAはこの評価構造を根本から見直しています。
正直コーヒー業界に携わるのであれば、このCVAを理解していないと今後大変かもしれません。
なぜなら、生豆の購入意思決定に有利な影響を与える可能性があるからです。

焙煎は季節による影響や、オーナーであれば焙煎士の雇用・教育リスクなど、クオリティのブレを抑えることが非常に難しい要素の一つです。
しかし根本的な品質や素材由来の要素が優れたコーヒー豆は、ある程度の教育を施した焙煎士と抽出者でブレ幅を抑えることもできます。
【備考】もちろん生豆の担当者がヘッドロースターであれば理想的。
CVAの評価方法が従来と比較してシステムが画期的なため、知っているか知らないかで今後コーヒー店の間で大きな実力差を生む要因になるかもしれません。
僕自身、このCVAを実践的に学ぶために概要の講習に加えて、実践的な講習も複数受講してきました。

【備考】講習についての体験談は今後共有予定
今回の記事では実際の講習での話も踏まえて、下記の内容に焦点を中心に解説していきます。
- SCAとは何か?
- スペシャルティーコーヒーとは何か?
- CVAがなぜ必要だったのか?
CVAをまだ知らない方も、名前だけ聞いたことがある方も、この記事を通して「コーヒーをどのような概念で評価するか」の新しい視点を掴んでいただければ幸いです。
SCA(Specialty Coffee Association)とは?
スペシャルティー・コーヒー・アソシエーション(通称SCA)は2017年にSCAAとSCAE が統合して誕生した国際的組織で、コーヒーに関する科学的・教育的・経済的知見を集約する中核機関です。

統合前からSCAA は生豆の品質評価プロトコルとカッピングフォームを運用し、コーヒー農家へのフィードバック・品質改善・市場価値の向上を目的としたサイクルを作ることで”スペシャルティーコーヒー”という認知を拡大させることにも成功しました。
つまりコーヒーを知る上で、SCAは切り離すことができない超重要組織であると言えます。
しかしながら日本にはSCAの直轄組織が存在しないため教育面などで足並みを揃えることが難しく、独自の思想や文化が多く点在しているのが現状です。
SCAJはSCAとは無関係の組織で、カッピングの手順・思想などもSCAとは大きく異なるため、時折カッピング作法の問題で混乱を生んでいます。
現在ワールド・バリスタ・チャンピオンシップ(通称WBC)などの、業界が注目する世界大会のスタンダードがSCA発信であることから、コーヒーの基本に携わりたい方は、SCAJのプログラムではなくSCAのプログラムをチェックするのがオススメです。
CVAの登場背景
CVAが従来のSCAの方式から大きく変化した理由は大きく分けて4つあります。
1.スペシャルティーコーヒーの定義の形骸化
2004年から定められていたスペシャルティーコーヒーの基準は、コーヒー業界に携わっているプロであるはずの人間ですら知らないのが現状です。
従来の定義
・SCAプロトコルに従った手順でカッピングを行なっていること
・カッパーによる評価点が80点以上
・グリーングレーディング(350g)において一次欠点が0点。2次欠点が5点以内。
・焙煎豆(100g)におけるクエーカーが0個(Q認証においては3個以内)
上記を満たすものがスペシャルティーコーヒーとして定められていました。
正直この規格全てを厳密に満たすコーヒーは多くないため「スペシャルティーコーヒー専門店」を謳う店舗でも、定義上はスペシャルティーのグレードでない豆をスペシャルティーと思い込んで取り扱う場合もあります。

このように折角定めた定義が曖昧に利用されたことで”本物のスペシャルティーコーヒー”は、一部の人間にしかわからない形骸化したものとなってしまいました。
2.点数=価格に繋がらない現実
上記の定義が形骸化しているのに加えて、市場価格と評価点数の認識に乖離が生まれたことも大きな要因です。

つまり「風味特性が80点以上ならスペシャルティー」という基準があるにも関わらず、79点と81点に市場価格的な違いが無い(むしろ逆転することすらある)という現象が度々発生していました。
これで誰が困るかというと農家です。
例えば農家が設備投資して懸命に育てたコーヒー豆で81点を取ったにも関わらず、他の農園の79点のコーヒーと同じ価格だった場合、継続的な生産が困難になってしまいます。
何が起こっているのかというと、市場においての価値評価は”単純な美味しさ”ではなく「農園名・実績・品種・精選方法・認証」などの外在的な要因も加味されていたということです。

皆さんの実例で考えてみてください。
- エチオピア イルガチェフェG1 ナチュラル
- ブラジル ミナスジェライス州 No2/S17 パルプドナチュラル
点数が同じだとして、どちらを選択しますか?
アンケートをXとInstagramで取った結果をチェックしてみると、どちらもエチオピアが上回りました。


国が違うので極端な事例ですが、このような事例と同じような事象が発生しています。
つまり、従来は「美味しいコーヒーを作れば高く売れるよ!」というアドバイスを農家にフィードバックしていましたが、それだけでは上手くいかないということが表面化してきたのです。
3.従来の評価基準外のコーヒーの登場
点数と価格の不一致に拍車を掛けたのが、長時間発酵を前提とした精選方法や科学的な技術進歩により登場した新たな精選方法を採用したコーヒーです。

従来の評価方法では伝統的なプロセスが前提となっていたため、このようなコーヒーの評価は点数と市場の好みが大きく乖離する原因となりました。
それに加えて、市場でも「好き・嫌い」の評価が分かれる独特なコーヒーが増えたことで、点数の意味合いが更に薄れた事も関係していると言えるでしょう。
4.評価システム自体の問題点
従来の評価シートには主観評価と客観評価の2つが混在していたため、大前提としてカッパーやフォームを読む人に複雑な処理を求める構造になっていました。

そのためQ鑑定などの”統一した客観的評価に近い点数付け”を求める場面においては、カッパーの負担が非常に大きく、脳の構造上でも非効率であるとされています。
一例として「酸やフレーバーの”強さ”と”品質”の評価は別軸である」というのが、1つの書面に評価が同居している旧フォームでは中々理解されません。
このように訓練を積んだカッパーでなければ適正な評価ができないという前提によって、旧フォームは敷居が高く使い勝手が悪いものだったのは事実でしょう。
新スペシャルティーコーヒーの定義
CVAの登場に合わせて、2023年にスペシャルティーコーヒーの定義は下記の通り書き換えられる事になりました。
Specialty coffee is defined by the Specialty Coffee Association (SCA) as a coffee or coffee experience that is recognized for its distinctive attributes, resulting in a higher value within the marketplace.
引用:https://sca.coffee/research/what-is-specialty-coffee
日本語訳(直訳)
スペシャルティコーヒーは、スペシャルティコーヒー協会(SCA)によって、その独特の属性が認められ、市場内でより高い価値をもたらすコーヒーまたはコーヒー体験と定義されています。
今まではコーヒーだけ記載だったものに”体験”という言葉が加わった事で、非常に広い範囲の概念と化しました。
この定義における”属性”というのが比較的重要なワードになるので、その点について後述します。
「属性」とは?
SCAでは”属性”の意味について下記の通り記述しているので、参考にしてみましょう。
A property that is characteristic of something; a quality or feature regarded as a characteristic or inherent part of a coffee. A product (or coffee) can be thought of as a collection of attributes. Well-defined attributes can be identified using a variety of methods.
引用:AW_SCA-102_Sample-Preparation(https://static1.squarespace.com/static/584f6bbef5e23149e5522201/t/6731cfbf355ac535d2d6074c/1731317695988/AW_SCA-102_Sample-Preparation_28.10.24_Secured.pdf)
日本語訳(意訳・直訳含む)
あるものの特徴を示す性質のこと。コーヒーにおいては、その特徴的または本質的な要素と見なされる性質・特徴を指します。
上記だけだと意味の理解が難しいため、下記の記述も参照しましょう。
Specialty coffee (see definition in section 4) acquires value because of its attributes, whether intrinsic (related to the material reality of a coffee) or extrinsic attributes (the informational or symbolic attributes of coffee).
引用:AW_SCA-102_Sample-Preparation(https://static1.squarespace.com/static/584f6bbef5e23149e5522201/t/6731cfbf355ac535d2d6074c/1731317695988/AW_SCA-102_Sample-Preparation_28.10.24_Secured.pdf)
日本語訳(意訳・直訳含む)
スペシャルティコーヒーは、内在属性(コーヒーの物理的・現実的な側面に関連して)または外在属性(コーヒーの情報的または象徴的な属性)によって価値を獲得します。
上記説明の”属性”を分かりやすく区分すると、下記のようになります。
- 内在属性:コーヒーの風味・物理的サイズ・損傷・欠点・品種など
- 外在属性:生産国・農園名・認証など
内在属性の事例
これはゲイシャ種のコーヒーでフローラルとシトラスの香りが特徴的です。
外在属性の事例
これはエチオピアの〇〇農園で、有機JAS認証を取得したコーヒーです。
つまり今後のコーヒーは、これら2つの属性を総合して価値を測定するという考え方にシフトします。
そして”スペシャルティーコーヒー”足り得るには、この属性が”独特”であることが必要だと定義に記載されているということです。
総評・まとめ
以上でCVA登場の背景と目的、新しいスペシャルティーコーヒーの定義について紹介しました。

CVA自体は非常に画期的なシステムなので、お客様にコーヒーの説明をする時も「どんなコーヒーなのか」を端的に説明できるようになる等のメリットがあります。
【備考】上記の意味については、実践的なCVAフォームの記載方法にて説明しています。
また、スペシャルティーコーヒーの定義が以前よりも拡大した事から、バリスタ・ブリュワーは更に高い説明能力が求められることになるでしょう。
「CVAについて更に詳しく知りたい!」という方は、当店のセンサリートレーニングでもスコアシートの付け方をお伝えしています。

五感を使ったトレーニングを通して、美味しさや感動を自分の大切な人やお客様に伝えられるようになること。
それはコーヒーを仕事にする方にとっても、趣味で楽しむ方にとっても、大きな財産になるはずです。
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